エリザベス女王の棺の上に飾られた美しい花々の「リース」。
リースには、「永遠」という意味があります。切れ目のない輪の形から、永遠を象徴するものとして、ヨーロッパでは飾られています。
故人とのお見送りには、花はかかせません。
今回は、枕花の不思議なお話です。


「看取り介護」をされてる介護士さんから、枕花のご依頼がありました。
看取り介護とは、死期の近づいた人が、人生の最期を自分らしく穏やかに迎えられるよう、苦痛やストレスをできるかぎり少なくして、無理な延命を行わず自然に亡くなられるまでの過程を見守るお仕事です。


最後の看取りとして、枕花を添えたいというご依頼。
私はお花を作るとき、音楽をかけます。
出産祝いなら、赤ちゃんが喜びそうな音楽を、病院のお見舞いなら、パッヘルベルのカノンのような落ち着かせて痛みの記憶を和らげるような曲。
私はお花たちを店のスタッフだと思っています。「これから行くあなたたちの仕事場は、こういうところなんだよ」と音楽で伝えるんです。


ご依頼の枕花のときは、静かにお経を聞かせました。
お経を聞きながら、花を束ね、花たちにお願いするんです。亡くなられた方の生前の病の苦痛やまだ生きたいという思い、それをみんな包み込んで癒してあげて欲しい。
残された家族の悲しみには、ご苦労様でしたといたわって欲しい。


後日、介護士さんからLINEを頂きました。そこには、葬儀を終えた奥様からのお話が添えてありました。
亡くなられたご主人の浮腫んでいた顔が、出棺の時、お花を入れた後には目鼻立ちがスッとした、今までのカッコイイ主人の顔に戻っていたので嬉しかったというお話です。


私の作った枕花。
白のトルコ桔梗、グリーンカーネーション、紫のアルストロメリア、薄い紫のリンドウ、そしてひまわり。
私のスタッフたちが、魂を癒して輪廻の輪に送り届けてくれたのかもしれません。


私が花の市場に仕入れに行くときです。
同じ箱に入ってる束なのに、この束だけぼんやりと光ってることがあるんです。

お花のスタッフたちは、仕事を終えればその一生を閉じます。
ほんわか光ってるその花の束を見たとき、「お帰り!」って言葉が浮かびます。
私のスタッフたちが帰ってきた!そう思うのです。
「お疲れ。帰ろうか」って感じで、その束を仕入れて店に戻るのです。


輪廻の円環。
私たちも、お花たちもリースのような円環の中で永遠に生き続けているのかもしれません。